2018.2.3

 

 1月の放送のとき犬の鳴き声や鶏の鳴き声を英語やベトナム語でどのように言うかの話をしました。その後、外国語のことを少し原稿に加えましたが、時間的に収まらない可能性があったので、その部分を削除しました。今回はその1月の削除した原稿に加えて、私が日頃好奇心を持っていたことを展開した内容をお伝えすることにしました。

 自分たちが使っている言語によって、聞き取れる音がぜんぜん違ってくるように思います。音を基にした表記の日本語は、外国人にはほぼ伝わりません。特に日本人が英語だと思っているカタカナ語は、外国人には想像もつかない言葉と感じられてしまいます。私の会社のベトナム人スタッフは、日本人のメールを読んで返信をしているのですが、私に質問が多いのがカタカナ語です。カタカナ語は英語でもなく、日本人が英語を聞いて聞き取れる音をカタカナで表しているだけです。アルファベット表記にしたらすぐ解るのですが、カタカナでは想像ができなくなるのです。漢字やひらがなで書く日本語はある程度わかるようですが、カタカナは別です。

 日本人が英語と思っている和製英語はたくさんあります。アルバイトのことは、英語ではPart-time job,ノートパソコンのことはLaptop,ホチキスのことはStapler,ちなみにホチキスは発明者の名前だそうです。私はベトナムで不動産の仕事もやっている関係で、日本以外では通用しない擬似英語があることを感じます。

 日本の分譲マンションのことはCondminiumですが、これはなんとなくわかります。しかし、ベトナム人に伝えられない質問は、「コンセントはどこにありますか?」という質問です。Consentはまったく通じません。Consentとは、英語で一致する、あるいは同意するという意味です。日本人から「一致するところはどこですか?」と聞かれて、「何を言ってるの?」と思わない人はないです。こうなるとジェスチャーで伝える以外に不可能です。電気のコンセントのことはアメリカではOutlet、イギリスではSocketです。クーラーのことはAir conditionerです。ベトナムでは暖房には使いませんから、通じそうなものですが無理です。電子レンジを追加して欲しいとの希望があったときにエレクトリック・レンジと言っても通じません。Microwaveというのが電子レンジの正式な英語です。ベトナムで不動産案内をするとき、ほとんどの物件ではトイレとお風呂はだいたい一緒になっています。洋式のホテルを想像してみてください。建物の間取りが、英語の会話にも反映しています。英語で「トイレはどこですか」と聞くときには、普通トイレットという単語は使いません。「Where is the bathroom?」あるいは「Where is the restroom?」と使います。日本で「化粧室はどこですか」というとトイレと連想できますが、「お風呂はどこですか」と聞かれたほうは「変なやつ」と思ってしまうでしょう。ただ、外国では当たり前にトイレのことです。

 有名な和製英語を披露しましょう。たとえば既製品でなく自分にあった洋服を作ってもいらうことをオーダーメードといいますが、英語ではありません。正式な英語では、Custom Madeになります。また、リフォームも英語では、Renovationです。商品購入後のサービスをアフターサービスといいますが、英語ではCustomer Serviceです。スキンシップも英語で同じ意味で使われるのはPhysical contactといいます。「私はあなたのサービスにクレームがあります」を英語にすると、「I have complaints in your service.」クレームとは違う単語を使います。クレーム(Claim)は主張することを言いますから、文句を言うこととは違います。カタカナ英語は、英語を使う必要がない日本人同士での会話で使われます。そのため日本人だけがわかればすむのですが、そんな言葉だけが増えていくのはどうかと思います。コンビニなどの短縮形が増えているのも日本の特徴です。海外の短縮形は、アルファベットだけで表すのが一般的です。日本ではパソコンですが、一般的にはPCです。もともとはPersonal Computerです。テレビもそうですね。英語ではTele-Visionですから、TVですね。スマホなんて言葉も日本独特ですから、通じるはずはありません。Smart Phoneですから、英語で略せばSPでしょうけど、そんな言葉はあまり聞きません。

 ちょっとした発音の仕方の違いもたくさんあります。私が大家さんに「ガスがなくなりました」と伝えたとき、Gasという言葉がぜんぜん伝わりませんでした。文字で書いたところすぐに伝わりました。Gasを私はガスと発音しましたが、ベトナム人はガッと発音します。日本人は子音で終わることになれていませんが、外国人は音にしない発音の仕方があります。同じようにかばんの意味のBagを日本人が発音すると、バッグと発音します。何の問題もないように思いますが、ネイティブの人の発音は、「バッ」です。Gはほとんど音になりません。同じように日本人が当たり前に使うコーヒーは、Coffee(カゥフィ)ですし、アルコールは、Alcohol(アルカホゥ)です。ベトナム人はかなり和製英語も聞きなれているので、コーヒーはわかってくれますが、それはベトナム人が機転を利かせてくれているからです。

 逆に英語になった日本語もあります。これはかなり日本が世界標準と違っていることを反映しています。以前は、Samurai,Bushido,Harakiri,Geisha,Ninjaなどの言葉だったのですが、日本食ブームSushi,Sukiyaki,Tempura,Tofu,Ramenなどから、Karaoke,Mangaなどの文化やTsunamiなどの自然災害も英語として通用するようになりました。今では日本独特の労働環境や社会のあり方が英語になっています。Zangyo,Karoshi,Hikikomoriなどがそれです。決して喜ばしいことではありません。日本に来た外国人が日本人から言われるGaijinという表記も最近使われるようになっているそうです。外人になれていない日本人が戸惑っている様子を示す言葉として、英語のForeignerでは表せないニュアンスをこめて使っています。日本は世界の中では不思議な国に見えるようです。

ところで最近私なりに関心を持っていることがあります。アジアにいると文字や言語の多様性に驚かされます。言語や文字とはどうしてこんなに違うのでしょうか?似て非なる言語があちこちにあります。東南アジアの言語は、ほんとに不思議です。ベトナムはアルファベト表記なので、多少は読み方の見当がつきます。ベトナムでは、アルファベットのFJWZを除いた文字を使います。除いた文字の代わりには、F=PHJ=GiW=OAZDDが二種類あります)を使うので問題はありません。CoffeeなどはCa Pheと書いてあるお店もあります。ベトナム以外の国の文字は何を書いてあるのか見当もつきません。

ベトナム文字               タイ文字

ビルマ(ミャンマー)文字        クメール(カンボジア)文字

ラオス(ラオ)文字         インドネシア文字

マレー(マレーシア)文字          チベット文字

モンゴル文字             中国文字

ヒンディー(インド)文字        バングラデシュ文字

 ハングル文字              アラビア文字

 タイ、マレーシア、カンボジア、ミャンマー、ラオス、インドネシア、チベットなど隣接した国々、地域であるにも拘わらず、それぞれ独特の文字を使います。インドネシアにいたっては、ジャワ文字、バリ文字なんていうものもあります。そもそもベトナムは、漢字表記からアルファベット表記に変わった国です。漢字の熟語の読み方が漢字からきている事を想定できるものが多くあります。文字も大きな違いがありますが、言葉や語順の違いなども大きく異なるようです。人類の起源や民族の移動などはDNAの分析である程度わかるようですが、言葉がどこで別れていったのかは逆に調べることが難しいと聞きました。

 文字をそれぞれ肉眼で見ていくと、漢字を知らない人はベトナム語が一番読みやすいかもしてません。しかし音の出し方が6勢あるベトナム語の聞き取りは限りなく難しいです。ベトナム語は漢字が起源ですから、漢字を連想できる組み合わせがたくさんあります。近隣にはないベトナム語の特徴です。参考にいつつかのベトナム語を紹介します。

 

Trung Quốc (読み:チュンクォック)→中国

Hàn Quốc (読み:ハンクォック)→韓国

quốc gia (読み:クォックヤー)→国家

quốc ngữ (読み:クォックグー)→国語

Chú ý  (読み:チュイ)→注意

quản lý  (読み:クァンリー)→管理

 文字ではなく今回のテーマは言語です。言語の話に戻りましょう。現在社会で利用されている最も母語話者人口が多いのは何語かご存知ですか?英語と言いたいところですが、中国語(北京語)です。88500万人の母国語だそうです。中国は広東語をはじめ他の言語もたくさんあります。2位が英語で51000万人、3位がインドのヒンディー語49000万人、4位スペイン語、5位アラビア語、日本語は9位、ベトナム語は1015位くらいにはなると思います。この統計はやや古いのでかなり変化してきているかとは思います。英語に関しては、第二外国語として使われるので、話ができる人はかなり多いものと思います。

 ヨーロッパの言語は、比較的すぐにわかりました。英語など主にヨーロッパの言語は、インド・ヨーロッパ語族に分類されます。イギリスやドイツなどのゲルマン語系、ラテン語、フランス語、スペイン語などのロマンス語系、ロシア語などのスラブ語系、インドのヒンディー語系、ベルシャ語系などがその系統だそうです。それぞれに拡散し、方言のように異なった言語になっていきました。南北アメリカ大陸やアフリカもオーストラリアなどもヨーロッパ諸国の植民地になり、もとともあった先住民たちの言葉は廃れていきました。植民地支配者の言葉に代わっていきました。

 アジアは大きく異なります。文字も大きな違いがありますが、言語も違います。アジアの言語を分析するのは研究者に任せるしかありません。その点でもアジアの言語の歴史の深さを感じます。今回は、日本語に絞って調べてみようと思いました。ところで以前日本人はどこから来たのかをハプロという遺伝子の傾向で分類したお話をしたことがあります。ところが言語に関しては諸説あり過ぎて何が正しいのかがわかりません。日本語はどこから来たのかの結論は、よくわからないと言わざるを得ません。

 日本人は大きく二つのグループに分けられます。縄文系と弥生系です。弥生系は中国の春秋戦国時代に難民として渡ってきた人たちのようですので、縄文人がどのような言語を使っていたかが鍵になりそうです。その中で沖縄の琉球語と日本語の共通性は多く、密接な関係が想定できるようです。このことは、古くから西日本と沖縄は交流があったことを表しているのでしょう。縄文人たちが使っていた「和語」とも言うべき言葉があり、その後弥生系の人がもたらした漢字を取り入れながら、今日の日本語に近くなっていったと考えたほうがいいようです。

 高校生当時岩波新書で読んだ「日本語の起源」(大野晋著)の事を思い出しました。この本ではとても驚きなのですが、タミル語説をとっていました。母音が、a,i,u,e,oと五つで、濁音半濁音などの違いも似ていることからその説を主張していました。タミル語とはインドやスリランカでかつて使われていた言語です。

 主要な説にアルタイ語説があります。アルタイ語の主な言語は、チュルク諸語(トルコからウズベキスタン、カザフスタンなどの中央アジア諸国)、モンゴル語、ツングース語(シベリア東部、サハリン、中国東北部(旧満州)あたりの言葉で、朝鮮半島やサハリンを経由して入ってきた言語のようです。語順の並びなどの文法と音韻に類似性があると言います。朝鮮語(韓国語)も同分類の言葉になります。これは金田一京助などの言語学者が支持をしていたようです。この言語が一番影響を与えている可能性が高いのではと私も思っています。

 オーストロネシア語説も根強く存在します。言葉の通りオーストラリア、ミクロネシア、フィリピン、インドネシアなど南洋を起源とする言語です。母音が強い言葉、複数の場合ことばを重ねるなどの特徴が日本語に似ているようです。その他アイヌ語説と言うのもあり、語順なども近く、それぞれに影響はあるようです。

 ところが中国語とは同一性がほとんどありません。文字は漢字を使われているので中国の文字(漢字)が起源ですが、言語は関連していません。文法がまったく違うのです。日本語の文構造が「SOV型」で、「主語→目的語→述語」の順番になりますが、中国語は英語と同様に「SVO型」で、「主語→動詞→目的語」の順番になります。ベトナム語も中国語と同じ構造です。そのため日本語の起源は中国語との関連は当てはまりません。

S=主語=subject  O=目的語=object V=動詞=verb

 言語については遺伝子のような遺伝子による科学的研究ができないので、わからないことがたくさんありますが、諸説を見ていくとあちこちからやってきた人が融合して、独自の言葉を形成していったと考えたほうがいいようです。日本列島はユーラシア大陸の東の端にあります。そのためさらに東に行くことは困難だったろうと思います。日本に入ってくるルートは、北(中国北部やロシアのルート)、東(朝鮮半島経由)、南(中国南部、台湾、東南アジア)から来た人たちが、日本に留まらざるを得ず、異なった言語を使う集団が複数存在する中で、接触や侵略などを繰り返すうちに「和語」が形成されていったと考えるべきのようです。特に西日本ではそのような傾向が強いようです。聞きなれない言葉ですが、日本古来の言葉の意味で「和語」と言う言葉をここでは使います。

 東北や北海道では「和語」ではなく、アイヌ語につながる言語が使われていたのではと考えられています。弥生人が日本に入ってくるようになると「和語」のほうが優勢になっていったと考えるのが妥当のようです。その当時は文字がないので詳しくはわかりませんが、日本列島の地理的条件が、他の言語には関係せず、「孤立した言語」として「和語」が成立し、その後中国から渡ってきた漢字を元に大和文字(文字)が発明されてきたようです。

 インドーヨーロッパ語族の言語は比較的詳細に分析されるようになったらしいのですが、日本語を含めアジアの言語は分析が難しいようです。祖先の生み出した文化をしっかり守る意志と力がアジアには強く根付いていたと言うことでしょうか?それだけにアジアの国々は興味深いともいえます。グローバル社会では英語力はある程度必要です。しかし、国語とはその民族の歴史、文化、思想を含んでいる言葉です。改めて国語は大事であることを思いました。

以上