ここのところ政治的な重い話が多くなってしまったので、今日は少しやわらかい話からはじめようかと思っています。私が原稿を書き始めようとしているころは、衆議院も解散され、総選挙に走り始めています。放送日のことには開票も終わって、新しい政治体制が確立している時期だとは思いますが、予想もつかないそんな話からは離れてもっと違った話題を探そうと思いました。

今回は飲食から話を始めます。そういえば先日、キューピー社を訪問しました。もちろんキューピーマヨネーズを作っている会社です。ベトナム南部のビンズン省でマヨネーズを作っている会社です。ここでベトナム語の南北の言葉の違いをお伝えしますが、ビンズンは北部の言葉です。南部ではビンユンと言います。同じようにベトナム女性の民族服アオザイは北部の言葉です。南部の人たちは

アオヤイと発音します。簡単に言うと北部はザ行を使い、南部のそれに対する言葉はヤ行です。たとえば前首相の名前はDuongさんでしたが、北部ではズンさん、南部ではユンさんと呼ばれます。

脱線してしまいました。キューピーの話に戻します。日本では赤いラベルのマヨネーズが主流ですが、ベトナムでは比較的酸味を抑えて少し甘い感じの青ラベルが人気があるとお聞きしました。地域によっても、民族によっても味の好みはさまざまなようです。前にも話したことがありますが、ベトナムの緑茶のペットボトルには砂糖が入っているものが多いです。なれない日本人には飲めません。また、牛乳にも砂糖入りの牛乳がたくさんあります。いつも暑い地方なので、糖分を必要とするのでしょうが、なれないと違和感を感じます。

ところで今日の本題はビールです。ベトナムは世界でも屈指のビール消費国です。国別のビール消費量は次の通りの順番です。人口の多い国が有利なのは間違いないのですが、次の順番です。1位から10位の順に伝えます。中国、アメリカ、ブラジル、ロシア、ドイツ、メキシコ、日本、イギリス、ベトナム、ポーランドです。

一人当たりの消費量は次の通りです。チェコ、セーシャル、ドイツ、オーストリア、ナミビアだそうです。セーシェルはインド洋に浮かぶアフリカ東海岸寄りのさんご礁の諸島です。ナミビアはアフリカ南部の最も独立が遅れた国です。どこにあるのかしらない人も多いのではないでしょうか。そんな無名の国もビールは愛されています。多くの人類に愛されるアルコール飲料です。ベトナムにいるとどういうわけか、チェコビールのビアホールがあちこちにあります。社会主義政策を進めていたときの名残なのでしょうか?チェコビールやドイツビールの店もたくさんあります。

ベトナムのビールの消費量は、前年に比べ7.7%増加したことが出ていました。増加率では世界トップで前年11位から9位になったとの事です。世界のビールの消費量は、2015年は前年に較べて、0.3%のマイナスになり、これは30年ぶりのことだと出ていました。日本のビールメーカーもベトナムなどアジアに進出しようとしている理由がよくわかります。

ところで、ベトナム、私が住んでいるホーチミン市は外国人も数多く住んでいます。アジア系の人はもちろんですが、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアの人たちもたくさん住んでいます。そんな人たちがもたらしているのがクラフトビールです。日本語で言うと地ビールということになるでしょう。ヨーロッパで修行したビール職人たちが新しいタイプの地ビールを作っています。ヨーロッパやアメリカでは、料理を作るように、家庭でビールを造るといいます。そのために多くの人がビールの作り方を知っています。

まずは、スケッチという日本人向けのフリーペーパーに紹介されていたのが、コメルトン兄弟が作るプラチナムビールです。その兄弟が言います。「アジアでは色がクリアな軽いラガーが主流ですが、ホップがきいたビールが飲みたくて自分で作った」というビールです。最初はビールが濁っているといわれて何度も返品されたそうですが、ベトナムのBBQブームの影響もあり、濁ったビールが徐々に定着していったといいます。

 

そのように今回は「I Love  Craft Beer」ということで、さまざまな国の人たちが、自国の伝統とベトナムの文化を融合したビール作りを行っていることを特集していました。それにしても東南アジアにはビールがあふれています。庶民のお酒はほぼビールが主流です。ビールとは主に大麦を発芽させた麦芽(モルト)をビール酵母でアルコール発酵させて作る飲料との事ですが、世界で最も普及したアルコール飲料です。

歴史は古く、紀元前4千年のころにメソポタミア文明のシュメール人によって作られたという資料が残っているようです。当時は大麦やエンメル麦から作られ、黒ビール、褐色ビール、強精ビールなどの種類があり、神々にささげられるほか、人々にも再配分されたといいいます。

その後、ヨーロッパにもたらされ、特にゲルマン人主導のフランク王国が成立すると、ヨーロッパ全土でビールが作られるようになり、ビール文化はヨーロッパに根付いたといいます。そして現在のビールの製法は19世紀後半のデンマークのカールスバーグ社が開発したビール酵母の純粋培養技術と雑菌を徹底的に排除した缶詰、瓶詰めの技術によるところが大きいといいます。それまではワインが食事に必須なお酒でしたが、安価になったビールが普及することで、食事のお酒としての地位が、ビールによって逆転しました。

アジアでもビールの製造が盛んです。中国では、チンタオ(青島)ビール、燕京ビールなど、タイではシンハ(Singha)、チャーン(Chang)、シンガポールではタイガー、フィリピンではサンミゲール、ベトナムでは333(バーバーバー)やハノイビール、サイゴンビールが有名です。それぞれの国を代表するビールが育っています。このようにビールに関しては、人類の共通のアルコール飲料として、それぞれの伝統の中にしみこんで各国で発展しているようです。ただ、イスラムの国は原則禁酒なので、アルコールの文化は発展していません。

イスラム教には「ハラール」という飲食に関する厳格な規定があります。ハラールに代表されるのは、豚肉とアルコールです。多くのイスラム国では、アルコールの販売や醸造もしていません。イスラム教の聖典には「酒と賭け矢、偶像と占い矢は、忌み嫌われる悪魔の業である」と記載されています。ただお酒が飲めないのは現世だけで天国には酒の流れる川があり、自由に飲酒できると考えられています。

多くの国では、受け入れられているビールですが、イスラムだけは例外です。それはイスラムが戒律、伝統的考え方を非常に大切にするからなのかもしれません。その意味でいうとまじめであるともいえます。重たい政治的な話は避けようと思ったのですが、イスラムの伝統を重んじる考え方から、今回の衆議院選挙で「保守主義とリベラリズム」という言葉が注目されている事を知りました。イスラムの戒律に厳しい考え方は、保守主義(コンサバティブ)と言えると思いますが、この言葉はそれぞれの国や地域の歴史的背景の違いもあり、捉え方がさまざまですし、それに対するリベラリズムという言葉も地域によってかなり異なります。

アメリカでは、共和党に代表されるのが保守主義と捉えていいように思います。トランプ大統領は共和党です。一方、リベラルなのは、民主党です。以前のオバマ大統領が所属しています。それぞれのトランプさんとオバマさんの考え方の違いが、その特徴を表していると思います。共和党の保守主義とは、自由競争を重視し、他者からの強制や干渉も排除しようとの考えです。自分のことは自分で守るとの考えです。アメリカの独立戦争のときの基本的考えを土台にしています。民主党は、行き過ぎた競争から現れる矛盾を社会政策を重視して改善する考え方です。所得の再分配や貧富の格差を調整すること、弱者は国の政策で救済することなどを検討します。オバマケアなどまさにその考え方です。比較的大きな国家を前提にしています。

一方、ヨーロッパは三極の考え方があるようです。保守主義、リベラリズム、社会民主主義の三つです。保守主義は、昔ながらの伝統を重んじる立場です。リベラリズムは、自由競争を重視する考え方です。社会民主主義とは、国主導の社会政策を重視する考え方です。経済思想でこの三極を分けると次のようになるかと思います。社会主義を含めるて4極として表しましょう。

経済学説で分けてみます。

① 古典派→新古典派      保守主義・新自由主義(右派)

② ケインズ主義(修正資本主義) リベラリズム (中道右派)

③ 改良主義、社会民主主義   社会民主主義(中道左派)

④ マルクス経済学       社会主義(左派)

①については、アダム・スミスの考え方にあるような自由放任を求める考え方です。自由な経済行動が、見えざる神の手に導かれ、自然調和する社会事が健全な社会との考え方です。この考えは、最初から保守主義であったのではありません。その当時の重商主義的な富、言い換えれば植民地から略奪してきた富の蓄積が本当の国の豊かさではなく、生産性の向上や分業によってもたらされる富が本当の国あるいは国民の富であることを主張したのです。そのときは時代を変える革新的な考え方です。その考えが資本主義経済の基本の考えになり、今の時代では古典派といわれる所以です。

②については、自由放任ではやがて矛盾が現れてくる。これを市場の失敗といいます。そのときに政府による矛盾の解消、弱者救済の措置が必要であることを述べています。不況のときは公共投資により、経済を回復させる考えです。ケインズというイギリスの経済学者が提唱した資本主義を一部修正する考え方です。代表的な例はニューディール政策です。

③については非マルクス主義的(革命ではなく、斬新的な議会主義による改革、法改正に雄よる改革)な所得の再分配を進める考え方は、労働者重視の政策を実現する考え方です。②はやや資本主義的、③はやや社会主義的な考えです。

④については、冷戦の終結により、社会主義経済を実行している国は、ほぼなくなりました。歴史的遺構になり始めています。旧来の社会主義政党は③の社会民主主義政党に近くなっていると思います。

社会の変化の過程は通信などの技術革命で、グローバル経済がどんどん拡大されています。グローバル化の進展の中で、価値観の多様化は進みますが、それにより従来の大切な価値観や思想が変化を余儀なくされることから、それを守る考え方として保守主義的(コンサバティブ)な考え方も増えてきています。

日本の政党も色々変化をし始めています。リベラリズムとは本来の英語では、自由主義の事を指しますが、日本で言われるリベラリズムとは、もっと広い意味があるように考えられます。参政権の平等や男女の平等など政治的自由の拡大を目指す意味合いが強そうです。伝統的価値観以外に、少数派の意見の尊重や自分の信じる価値観以外にも寛容性を持って受け入れようとの立場がリベラリズムです。外国人排斥やマイノリティーの排斥の考え方からは、一線を画していると思います。。

今や、資本主義か社会主義かを問うことはなくなりましたが、伝統的な社会を守るのか、生き方や考え方が違う人たちをどのように受け入れるのかが問われています。また社会発展と文化思想の維持と変化をどう考えたらいいかも問われています。どちらか一方が正しいかを争うのではなく、何を残して、何を変えるかの考え方が必要なように思えます。グローバル化が進む社会の中では、必ずしも今までと同じ価値観にとらわれることはできないでしょう。しかし、今までの伝統的価値観の中で守るべきものと変えるべきものが何なのかを含めて、考え方や生き方が問われる時代がやってきていると思います。どちらに軸足をおいて生きるのかは、政治家に限らず、一般人も考えておいたほうがいいかもしれません。

 

以上