今回はまずベトナムの新聞に載っていた記事から紹介しましょう。所変われば、大きな違いがあります。グローバル化の時代にはこの違いが大きな意味を持つことがあります。どこで何をするのが有利かを考えられる人は成功できる可能性が大きくなります。そのニュースとは以下の内容です。

「(ベトナム)政府はこのほど、公務員の最低賃金を定める政令第47号/2017/DN-CPを公布した。それによると、7月1日より公務員の最低賃金が、現行の月額121万VND(約6000円)から、9万VND増の130万VND(約6400円)へと引き上げられる。公務員の最低賃金は、2013年に引き上げられて以来、予算不足を理由に調整が先送りされていたが、2016年5月に引き上げられて、2年連続の引き上げとなる。政府は公務員の最低賃金の引き上げに向けて、歳入を増やすほか、歳出の管理に関する行政改革の強化をするように関連当局に対して指導している。」

この記事を日本人が読んだならば、公務員の給料がこんなに少なくてやっていけるかと思うでしょう。ベトナムを見ていると公務員は、副業で稼ぐことができる人たちです。公的な立場にいることを利用したサブビジネスと言うのでしょうか、そんなことがまかり通っている社会です。公式にしない収入を確保する方法があり、それは不正とはみなされていない傾向があります。それがまかり通っている理由は、逆説的に給料が安すぎることが一因であると思います。

記事の中で歳入を増やす、歳出の管理をするとさりげなくかかれていますが、今までの経験から言うとこれが厄介なことを引き起こします。税務当局など公的機関は、とりやすい方法で歳入を増やそうとします。端的に言うとお金がありそうな外資企業に税務調査に入って、追徴課税を指摘するのです。たとえば、親会社からソフト開発の仕事をベトナムの子会社が委託されたとします。その場合、日本の親会社とベトナムの子会社は、資本や人的に服従関係にあると言えます。その関係性の中では、海外子会社との取引価格の操作を通じて、海外に所得を移転することが可能になります。それを防ぐことを目的とした考え方が価格移転税制と言う考え方です。一般事業者同士とは異なる取り扱いが必要で、親子間の価格設定に妥当性があるかの証明をしなければなりません。

日本企業の場合、大半の企業は海外に所得移転をしようとはしていません。しかし、移転価格課税は、租税回避の意図に関係無く、取引の結果としてグループ間での所得配分が移転価格税制に即していなければ課税の対象となります。ただ、多くの企業は、そこまでの根拠を示す調査はしていません。費用もかかるし、証明が難しいからです。それをしていないと、不当な価格設定が行われているとして、多額の追徴課税をされることがあります。

先月の放送で、時間の関係でカットした最近ベトナムで起こっている話題を触れましたが、そのことも歳入確保のための手法かもしれないと思ってしまいます。正確なことはわかりませんが、次のようなことがおこっていました。

「ベトナムの市街地の歩道を歩くあちこちで出入り口の階段などを取り壊している様子が目に入ります。それは歩道に飛び出た構造物、階段、看板、庇などを取り外す必要があるからです。今まではベトナムの不動産所有者は、不動産を有効活用するために公共の道路(歩道)との境界ぎりぎりに不動産を建てていました。雨季になると激しいスコールも降るので水が浸水しないようにグランドフロアは、段差をつけて建設します。そのフロアにバイクを入れたり、お客様は入りやすくするための階段を作ったり、バイクを搬入しやすくするスロープを作っていました。その階段やスロープは、歩道にはみ出して作られていました。

ここにきて急に厳しく取り締まるようになりました。公的機関が違反した建築物の突起部分の解体を一方的に始めました。あちこちでこのような光景が見られるようになりました。この解体の費用は不動産所有者に請求されるようです。そのため自ら取り外している所有者も増え、あちこちで取り壊しをしていました。その後で移動できる階段を置いて、とりあえずお客様が入りやすいようにしているレストランがあちこちであります。たまたまベトナムに来た人には不思議に感じるでしょう。政府の号令があると徹底して行うのがベトナム流です。」

ベトナムでは一定の方向が決まると徹底することは得意です。歳入が不足するとなると何とかその不足を補うことが正義になります。そのことを知らないで徹底抗戦をしても始まりません。郷に入れば郷に従う気持ちでやっていくしかありません。ベトナム人からすると日本企業、日本人はお金持ちだから、多少余分にお金をいただくことは問題がないとの意識もあるようです。そのこともあって狙われる日本企業も多いようです。ベトナム戦争でアメリカに負けなかったのは、そのしたたかな考え方が備わっていたからかもしれません。

ところで先月サピエンス全史というお話をしましたが、その本を読んだ副産物で、かなりネットサーフィンをしました。ちょっと気になる言葉を検索すると世界が広がります。今回はそのネットサーフィンから知ったことをお伝えします。今日お伝えするのは、今まで想像もしてないことが定説になっていることを知りました。ミトコンドリアDNAを調べることで母系の祖先が辿れるのです。その科学の進歩が人類の起源を明らかにしました。細胞内のミトコンドリアに存在するDNAですが、母親由来でしか受け継がれないため、現生人類の母系祖先を遡っていくと、共通の一人の女性祖先のミトコンドリアイブにたどりつくことが知られているのです。

ミトコンドリアは、別の生き物と考えたほうがいいようです。細胞の中で共生関係にあるだけで別のものだと言います。体の中に入り込んだウィルスと同じだと言います。エネルギーを効率的に作り出してくれる便利なものなので、多くの生物はそのまま細胞の中に取り込んでしまったようです。人間などは肺から酸素を呼吸しますが、それをエネルギーに代えて糖や脂肪を燃やして、体温を保つなどエネルギーを発するのはミトコンドリアの役割です。そんな重要な役割を果たすミトコンドリアですが、宿主とは異なる個体ですので、それ自身が分裂して増ええていきます。有性生殖ではないので、ミトコンドリア自身の遺伝子は、そのまま分裂と言う形で複製されるだけです。そのため突然変異がない限り変わりません。突然変異があったとき初めて別種に分化します。

子供が出来るときに、父親からの精子による遺伝情報と母親からの卵子による遺伝情報を混ぜた状態で受け継ぐのは皆さん承知の通りです。ミトコンドリアDNAは母からしか受け継ぎません。精子にもミトコンドリアDNAはあるのですが、尻尾の部分にあるので、受精の際にはきりはなれてしまいます。そのために父親のミトコンドリアDNAは、受け継がれないことになります。と言うことは、卵子に受け継がれたミトコンドリアがそのまま使われるわけで、それは母親のミトコンドリアの複製というわけです。ですから、何らかの突然変異でミトコンドリアDNAに変化が生じない限り、それをたどっていけば母系をずっとたどれるわけです。突然変異が一定の確率で起こると考えるのならば、ミトコンドリアDNAが近ければ近いほど、その二人の人間(二つの人種)は最近まで母系の祖先が同じだと言えるわけです。

アフリカで発見された700万年前の化石が人類のスタートとして考えられるようです。なぜ、類人猿と人類を分けられるかと言うと2足歩行できる体型になったからだと言います。そこから現在のホモサピエンスになるまで長い旅です。400年前にアウストラロピテクスなどの猿人が現れました。ルーシーと命名された女性の化石が有名です。ただこの化石は身長も低く、チンパンジーの特徴も多数持っています。その後、原人と言われるホモエレクトスが現れました。このころから脳が大きくなっているようです。肉食をするようになったことが、脳の容積に変化をもたらしました。それは栄養素としての意味よりは、協力して狩猟したときのコミュニケーション能力と武器を作るために考えるという能力に関係があるようです。それらの原人ではジャワ原人、北京原人などが有名です。特に東南アジアは温暖で過ごしやすかったので、原人は繁栄しました。その後50万年前に旧人と言われるヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人などが現れました。一定期間氷河のヨーロッパで繁栄していました。

その中で環境の厳しいアフリカに留まった旧人の中の一つが、20万年前に遺伝子の変異を勝ち取りました。しばらくはアフリカに留まっていた種族が、アフリカから中東を経て世界に拡がりました。この種が現人類の祖先で、そのほかの旧人は全部絶滅してしまいました。この種のみが生存競争に勝ったのです。多くの種は絶滅し、現在まで唯一生存できたのはアフリカで誕生した一つの種だけでした。

この遺伝子の研究成果では、現代人にミトコンドリアDNAを残せたご先祖様はたった一人の女性で、他の系統は消えてしまっていると結論づけました。ただ、最初は一人でも同じミトコンドリアDNAを持った人は集団になっていきます。最低でも数十~数百人のコロニーが存在しなければ、種として存続することができないから、おそらく人類が類人猿から分岐した当初は、限られた数の血縁関係で結ばれた個体があつまってコロニーを作っていたのでしょう。長い年月の間に、結局コロニーの個体全部が、同じ起源のミトコンドリアを持つもので占められるようになり、やがてこのコロニーの一部が、各地に分散していったということなのです。

本来は複製(クローン)しか作らないミトコンドリアDNAの突然変異が、どこで起こって、その後変異したDNAがどこに拡がって行ったのかの研究も盛んになっています。ここからは今の人類に通ずるホモサピエンスだけの話です。広い地域に分散したコロニーは、環境の変化などでDNAの変異を獲得していきます。変異したミトコンドリアDNAの分類を、ハプログループ(ハプロタイプの集団)と言います。

大きく分けるとアフリカから出ないグループ(非出アフリカ=ネグロイド)、南ルート(オーストラロイド)、北ルート(モンゴロイド)、西ルート(コーカソイド)に分かれるようです。南ルートは、マレー半島からインドネシア(以前はスンダランドという陸続きでした)、オールトラリアに渡った先住民のアボリジニなどのことを指します。北ルートはシベリアに渡ったルートや中国、朝鮮半島を渡ったルートがあるようです。アメリカ先住民などもその一種です。西ルートは中東からヨーロッパに行った集団です。この研究を進めると日本人がどこから来たのかの起源も遺伝子による調査でわかることになります。皆さんも興味があると思いますので、今回は時間の関係でお伝えできません。このお話は次回お伝えしようと思います。

ベトナムの公務員の給料の話から、人類の起源の話になってしまいましたが、

世界に拡がっている移民を排斥する動きやヘイトスピーチ、さまざまな差別などが広がっている昨今の政治経済事情です。アメリカ、ヨーロッパなどで広がっていますが、日本も例外ではないでしょう。白人はアパルトヘイトなど人種差別的な行動を取りました。白人が優越していると信じさせていた時代がありました。ところがアフリカ発の人類が唯一生き残ったのは事実です。今の人類の起源は、唯一アフリカ発なのです。少しの違いを認めない非寛容の考えが広まっている現在社会への痛烈な皮肉の事実と言えるでしょう。ダーウィンが言った言葉を思い出します。「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き残るのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できるものである」なかなか深い言葉です。

以上