2018.11.17

 11月弊社(ベトナムの法人)のスタッフが日本への旅行を計画していました。時々海外には出ているちょっとお金持ちのスタッフなのですが、日本に入国するためのビザが取れなかったとの事で、韓国に変更しようかとの相談がありました。日本の入国管理局は発展途上国の旅行者の入国には厳しいことは聞いていたので、驚くようなことではありません。しかし、比較的裕福なベトナム人が、日本にあこがれていて旅行をしようとしても、このように入国を認められないことはよくあります。

 年収の証明や銀行預金の残高証明など、ある一定の収入があることが証明できない場合は、日本側は入国を認めません。ただ今回は私たちの会社の従業員でもあり、親会社の役員が身元引受人として申請することで、日本入国のビザは取得できました。11月楽しみにしていた日本旅行が実現できることになりました。東京と京都に滞在するようです。後でわかったのですが、東京と京都の合間に白川郷にも行ってきたようです。

 時々ベトナム人を日本での研修に送ることがありますが、必要書類を準備して、収益を上げる目的ではなく、研修のための渡航計画であることを細かく報告して、ようやくビザが取得でき日本への入国が認められます。一方で日本人のベトナム入国はノービザで可能なのに比べて大きな違いがあります。

 実際は発展途上国の人たちの日本への入国が難しいにもかかわらず、日本で働くベトナム人など、アジアの発展途上国の人たちは、急激に増えています。ベトナム人に関してですが、厚生労働省「外国人雇用の届出状況」によると201226,828(全体の3.9%)だったのですが、2017年には240,259(全体の18.8%)にまで急増しています。実にたった5年で約9倍になった形です。入国が厳しく制限されているのに、一体どうしてこのようなことが起きるのでしょうか?

 この要因には、国の政策の変更に起因しています。各企業特に介護、建設、農業、外食などの分野の人手不足は深刻です。その不足を途上国の労働者を確保することで乗り越えようとしているのです。そのために入管難民法の改正が行われようとしています。現行では介護、製造業、建設、農業の分野では、技能実習生との名称で、「日本が発展途上国の人づくりに協力する」との詭弁ともいえる理由で行っている制度です。実際上は、労働力が不足している分野に技能を教えるとの名目で入ってきているのです。その技能が帰国して活用される例は非常に少ないのが現状です。結局は日本の労働力の補完、しいて言えば日本企業が安い労働力を確保するためだけに利用している制度です。途上国の人に技術を教えるためという美辞麗句は言わないほうがいいです。唯一日本語が上手になった実習生だけは、日系企業に就業が可能になっています。ベトナム人にしても、日本に行く理由は技能実習というよりはお金を稼ぐことだけが目的です。

 ところでコンビニや外食産業にはこの制度は利用できません。技能実習生の対象職種には入っていないためです。でも、コンビニや居酒屋にいくと外国人の店員がたくさんいます。その人たちは、留学生として入国しています。日本語学校などで、日本語を学ぶという名目で入国を認められている人たちです。留学は2年間認められ入管法第19条では週28時間以内のアルバイト、夏休みなど長期休暇の期間では一日8時間のアルバイトが認められています。実際その時間が守られているかは承知していませんが、留学生の労働力を頼りにしないといけない外食やコンビニ事業者の現状があります。日本政府は留学生を30万人受け入れようとの計画を持っています。これも留学生の名目ですが、実際はアルバイトをしてお金を稼ぐのが主な目的です。形だけの日本語の勉強では、疲れていて睡眠を取る時間になっているようです。本質の目的が、お金を稼ぐことですので仕方ないことでしょう。

 それ以外にも日本に入国するベトナム人は増えており、高度人材の立場で入国する技術者、通訳者などもいます。高度人材に認定されると滞在期間の制限がないので、企業としても都合が良いのですが、入管法で規定された高度専門職に該当しないと入国できません。学歴、職歴、年収、資格の取得など項目にポイントをつけて、一定のポイントに達した場合のみ認められます。高度人材の採用だけでは単純労働者の確保に困っている分野には何の助けにもなりません。その他、日本の大学も文部科学省から国際化を求められていることもあり、交換留学生などの外国人の受け入れに力を入れています。地方の国立大学に留学しているベトナム人もたくさんいます。そんな人材がベトナムに帰国するときに日系企業に就職するケースも増えてきました。

一方日本のことを見ていきましょう。日本では人手不足が深刻化しているといいます。特に中小企業には人が集まらず外国人に頼らざるを得ないとのことです。私が保険会社をやめた20年近く前は、そんなことはまったくありませんでした。再就職に苦労する時代でした。中高年になると満足のいくような転職は不可能であることを痛切に感じました。それから20年を経て、日本はなぜ人手不足になっているのでしょうか。それは日本が人口減少社会になり始めたからです。人口減少は既に数年前から入っているのですが、ここに来て、「少子化=人口減少」が目に見えるようになってきたと言うことでしょう。そしてその減少は、今後もっともっと深刻になっていくはずです。

 人口減少には一時的なメリットはあります。モノが売れなくなり値段が下がるのはメリットと言えるでしょう。ただ、製造するほうは売れなくて困ることになります。特に大きな買い物、土地、家、車は売れなくなっていきます。経済が縮小し、供給過多が深刻化していくのです。政府はデフレからの脱却と言い続けています。そして金融緩和によって銀行にお金を供給して、融資を拡大させることによって、消費を拡大させようとしています。そのせいで一部の不動産がバブル化しているとも聞きます。結局はお金を大量に発行しても、有効にお金が使われなくなっています。

デフレ脱却を謳いながら、実際は労働者の賃金が下がっています。特に影響が大きいのは、非正規雇用の労働者が増えているからです。そのせいもあって、通常の資本主義の経済成長のモデルが実現できません。通常の経済のサイクルは次のように動くのが健全です。

1、新規の事業を起こしたいと考える人がいる。

2、魅力的な事業者に資金を援助しようとする人がいる。あるいは魅力的な事業

  に投資をして儲けようとする人がいる。(投資家や銀行)

3、投資、融資を受けた企業は設備投資や雇用を拡大し、周辺の業者に利益が回り、労働者も増える。

4、投資家、労働者が配当や給与が増えて、消費が拡大する。

5、経済が拡大し、新たな投資を検討する人が増える。→その結果、経済の好循環が継続する。

ところが、日本の経済は、2の投資や融資する先がない状態です。企業も個人も新たな事業をして儲けようと自信を持っているものが少なく、反面将来不安が強いため今は消費や投資を控えようとしているのが今の日本です。唯一大都市部の不動産だけが高騰しています。経済発展を始めたベトナムのような国では資本主義の経済成長のサイクルが回転しています。しかし、日本では資本主義の経済成長のサイクルが機能しなくなっています。

 この傾向もますます加速していくでしょう。人口減少でデフレからの脱却は出来ません。デフレの進行と経済の縮小が今後続いていくことになります。また、若者の比率がどんどん減少することによって、上に立つ人が高齢化して行きます。高齢者も引退できなくなるわけですから、組織的にはチャレンジよりも安定志向になり、現在の生活を守ろうとするようになります。その結果、組織や会社は新しい変革ができなくなりますから、諸外国からも進歩が遅れていきます。また、高齢者たちが今の生活を守ろうとする傾向が強くなると、社会保障費の削減に対して強く抵抗するようになります。それによって社会保障費の増大は続きます。財政出動で景気を支えている側面がある日本経済は、更に巨額の財政赤字が拡大します。その結果、デフレからの脱却が、性質の悪いインフレによって実現するような皮肉な結果になる事はありうると思います。

 日本社会の現状をやや悲観的に捉えてみましたが、この20年の変化は人口減少のスピードが速まっていることから発生していると考えてもいいでしょう。

そこで政府が最近言い始めていることがあります。第一には、外国人労働者の受け入れ拡大です。「入管難民法」の改正案が閣議決定し、今後国会で論議されることになります。政府の骨子案では、あらたな在留資格では、介護、農業、漁業、建設、外食、宿泊、ビルクリーニング、飲食製品製造、素形材産業、産業機械製造、電子・電気機器製造、造船舶用工業、自動車整備、航空業の14の分野で「相当程度の知識と経験」を有する外国人労働者に最長5年在留期限のある「特定技能1号」を付与します。その後「熟練した技能」があると判断をされれば、「特定技能2号」を与え、在留期間無期限、家族の帯同も認める扱いになります。

 難しい表現を使っていますが、これが移民政策であるかないかは言葉だけの問題です。移民政策に舵を切ったと考えていいでしょう。日本の不足する労働力を確保するにはある面で必要とも思われるのですが、どのような影響をもたらすかは考えてみる必要があります。私なりに思うのは、この間の一連の政策は、企業経営にプラスになることに重きを置いた政策であると思います。確かに企業が稼ぐことが雇用を生むことは確かですが、企業はなるべく安い労働力を確保しようとする宿命があります。

 一般的な日本人は、外国人が移民してくることに違和感を感じる人も多いでしょう。治安が悪くなることを心配する人も多いでしょう。外国人との紛争の拡大や文化の衰退など悪い影響を考える人もいるでしょう。日本人の論調には、外国人への好感や嫌悪の面と企業経営上のプラスの面だけで語られていることが多いように思います。私には日本の労働者にとって厳しい現実が起こりえることを伝えようと思います。既にアメリカやヨーロッパで起こり始めていることでもあります。

 外国人労働が必要なのは、日本人があまりやりたいは思わない労働です。また、賃金が安い仕事です。経営者から見ると賃金を上げたくないと考えている分野の仕事です。私が思うのは既に新しい考えに進まないといけないのに、安い労働力があれば経営改革をしなくてすみます。コンビニなんかは24時間やる必要があるのでしょうか。従来型の安い労働力を使って収益を上げる考えが限界に来ているのではないでしょうか。安い賃金の外国人が入ることで、新しいビジネスモデルへの展開をする必要もなくなります。

 それ以上に問題だと思うのは、外国人労働者が増えることによって、企業では日本人の若者と外国人とどちらを採用した方が得策かとの議論になります。能力があるかないかも重要ですが、賃金が安いかどうかも重要になります。結果として、競争にさらされた日本人の若者の給料は、低く抑えられることになるでしょう。これも経済の悪循環を維持していく要因になりかねません。その結果、雇用を外国人と争わなければならなくなるかもしれませんから、外国人排斥のネオコン(Neoconservatism)の思想に走る若者も増えるでしょう。ヨーロッパで現れ始めている現象です。企業にとっては、安い労働力が手に入ることは意味があるのでしょうが、日本人の若者が非正規雇用で安定した生活を営めない状況を固定化するとしたら、国としては大きな問題と言わざるを得ません。

 もう一つは、10月22日政府の諮問機関「未来投資会議」が打ち出した、「70歳までの就業機会確保」のための雇用改革案です。年金制度を維持するためには、支給開始年齢を引き下げることが必要になってきているのでしょう。ただ、この扱いにも外国人労働者拡大と同じ問題が生じます。当然、高齢者には給与は減額されるでしょうから、正規雇用、非正規雇用の問題や高齢者、若者の賃金の問題が出てくるでしょう。高年齢層が給料が安いのはやむをえないとは思いますが、本来、労働力不足で上がるはずの若者の給料が低く抑えられる可能性があることが問題です。外国人労働者の受け入れに批判するわけではありませんが、外国人労働者が増えていいことばかりではないことは考えておくべきです。

 企業の国際競争力を維持するために、非正規などの雇用を大量に発生させました。その結果、非正規の若者は結婚も出来ず、子どもも作れない人が増えています。その解決策のために外国人労働者の注入と高齢者の就業を維持するということです。抜け落ちているのは、子どもの世代、若い世代が今後どんな人生を歩んでいけるかです。資本主義経済は労働者の賃金が下がり、消費が減少すると

経済は縮小が始まります。お金という血液の流れがあることでスムーズな成長を確保できるのです。余ったお金は将来の投資先に流れていきます。また、給料をもらった労働者は、生活を豊にするために消費をします。その循環が確保できる社会が成長するのです。消費者が未来を信じていることが消費を拡大させています。

 最後に日本にとって最悪とも言える傾向のお話をします。既に起こりはじめて

いることでもあります。外国人労働者も安い賃金の国にわざわざ行かなくなる可能性があることです。現実にベトナムの大都市部に住む若者たちが技能実習生に応募しなくなり始めています。そのために人材ブローカーは、田舎の青年に触手をつけようとしています。純情な田舎の若者たちが、金儲けのために人身売買に利用されている側面があります。日本の経営者が日本で労働者が集まらない分野で、外国人に頼る構図は、今だから通用する方法です。そのことを考えずに低賃金の労働力に頼っているとしたら、外国人も日本に関心を示さなくなります。

外国人は将来の夢を実現するために、お金を稼ぐことができる日本に行きたいと思うのです。しかし、現実は安い給料で、やりたくない仕事ばかりさせられるとしたら、母国に帰って仕事を選んだほうがいいと思うでしょう。日本が今後景気が低迷し、失業者が増えたときに最悪のことは発生します。そのときには、労働者は激しい競争にさらされることになります。そんな競争にさらされるのは、母国に帰れない貧しい外国人と日本の貧しい若者たちです。その局面になると、より一層の低賃金が待っています。夢も希望ももてない生活を余儀なくされます。

 非正規雇用や外国人に頼った経営は、経営の改革すべき問題に目をつぶらせる役割があるように思います。また、雇用される若者や外国人を犠牲にするような環境は、経済循環の面から見ても日本の衰退をもたらすでしょう。日本が考えなくてはいけないのは、若者が夢を懐くことができる社会を再構築することです。外国人と日本の若者にも、給与は程ほどに増やし、日本で働くことに夢を描けるようにすることのほうに未来があるように思います。

以上