2019.4.6

1、拡大する外国人の在留資格

 329日のViet-Jo Newsには、「日本のベトナム人入管法違反者数4395人で過去最高、中国抜き」という記事が出ていました。Viet-Jo Newsというのは、ベトナム語のニュースを日本語に翻訳して配信をしているニュース媒体です。ベトナム人の入管法違反者が、中国人の4185人を抜いて全体の27.0%を占め、国別では第一位になったとのことです。2017年の2931人に比べて、1464人増加し過去最高になったとのことでした。ベトナム人と一緒に仕事をしている私には残念なニュースです。このようなことが続くと日本人からはベトナム人に対する印象が低下していくことになるかもしれません。

 では入管法違反とはなんなのでしょうか?そのことを長くはなりますが解説していきます。日本は公式には移民を認めていません。そこで外国人が長期間日本に滞在するためには、在留資格という制度によって認められた人に限られます。現在の20193月までの在留資格には以下のものがありました。

 身分に基づく在留資格

  日系人や日本人の配偶者に与えられるもの

 技術や能力がある高度人材および専門分野の人材

  高度な技術者、人文分野、国際業務、特殊技能など日本人と同等の給料

  人文分野は10年以上の実務経験が必要なため難易度が高い

  通訳翻訳なども3年以上の実務経験必要

 技能実習

  農業、漁業、製造業、建設など特定分野と特定作業に従事する者に

  与えられる在留資格

 資格外活動

  大学生、日本語学校学生に与えられる週8時間まで認められるアルバイト

 特定活動

  ワーキングホリデイ、インターン、スポーツ・文化事業での滞在

2、入管法違反者の急増は劣悪な環境が要因?

 今年の3月までは、そのような資格者しか在留許可を認めていませんでした。入管法違反者とは、そのような在留資格で認められた範囲でないのに滞在している外国人のことになります。ここで①と②については、在留期間の制限は特にありませんので問題にはなりません。ただし、③、④、⑤については在留できる期間が決まっています。⑤は特殊な場合です。スポーツ選手が契約期間中だけ、日本国内のチームに所属するなどのことを指します。契約上の一定期間ですのであまり問題にはなりません。問題になるのは、③の技能実習生と④の資格外活動です。③は3年間、④は学校卒業までになります。入管法違反が発生するのは、この③と④に該当する一部の人たちです。

 ④に該当する外国人留学生に関しては、326日に配信されたニュースがありました。「留学生700人が行方不明、東京福祉大に立ち入り調査」という記事です。具体的には東京北区のキャンパスに留学していたベトナム人やネパール人など外国人留学生のおよそ700人が行方不明になっているというものです。これらの人たちはいずれも日本語学校から、この大学に正規の学生でない「研究生」として受け入れられました。なぜ「研究生」として受け入れたかとの大学側の回答は、「日本語能力が十分でなかったため研究生として受け入れた」と言っています。その構図から読み取れるのは、日本語学校にアルバイトをさせる目的で留学させて、在留資格が切れる前に、在留資格を伸ばすために教育機関を移動させることによって、合法的に在留期間を延長することを行っていたということです。ただこれは入管法違反ではありませんが、行方不明と認定された時からは留学の形跡がないわけですから、入管法違反になるとは思います。

 実際はこのようなやり方などで、入管法違反者がたくさんいるということです。たぶん最も入管法に違反をしているのは、技能実習生で在留資格を得た人たちでしょう。技能実習生は、労働者として入国している人ではありません。日本で3年間学んだ技術を母国に帰って活用できるために技能を勉強するという建付けです。国際貢献の一環として日本政府は考えていますが、実態とはかけ離れています。この制度は3年間のみ最初から最後まで決められた職場で、決められた作業のみしかできません。どんなに劣悪な労働環境であっても、給与が低くても職場を変えることはできません。それに耐えられない人たちは、失踪という形で脱走しているのです。ブラック企業といわれる企業はたくさんあるようですが、外国から連れてこられた実習生は何もなすすべはありません。じっと耐えて働くことを選ばざるをえません。

 耐えることができないときは、同じ国から来た同胞を通じて手招きをする人々が存在します。その人たちのアドバイスから、技能実習生はその職場を去り、闇の仕事をすることになります。そのような失踪者たちが入管法違反者になります。このような人たちは正社員として働くことはできませんが、短期間のアルバイトを転々とすることで、日本に長く滞在しているのが実態です。足がつかないように数か月ごとに職を転々として稼いでいます。当然ですが、外国人が自分の力で職を転々とするわけではありません。そのような職を斡旋するブローカーがいるのです。ただ、このような外国人も一定額を稼いだり、母国にそろそろ帰りたくなれば、入管に出頭することで母国に強制送還されます。それまでの期間、闇の職を与える人、またそれらの人材を雇用する人たちが存在しています。

3、新しい在留資格として登場した「特定技能」

 そのような問題が明らかになる中で、入管難民法が改正され今年4月から新たな在留資格が増えることになりました。

 特定技能

 特定技能15年間在留、家族帯同不可、相当程度の知識と技能を要する業務  につく労働者に与えられる資格です。

 特定技能1号後は特定技能2号に移行できる人がいます。特定技能1号のものが、熟練した技術を要する場合、在留期限の制限がなく、家族の帯同が許される在留資格を与えられます。これについては日本もとうとう移民制度を導入したと言われる制度です。

 導入した背景には技能実習生と外国人留学生における不法滞在の増加が影響をしていると思われます。それと同時に日本の労働者不足の深刻さです。特定技能1号では、日本に滞在する外国人技能実習生を修了した人には日本語試験と技能試験は免除されます。また、技能実習生を修了して母国に帰った人にも免除されます。日本に来ていて経験のある実習生にはもう一度戻ってきてほしいとの考えがあります。外食、コンビニ、ホテルで働いている外国人留学生にも技術検査と日本語試験に合格すれば労働者として在留できるようになりました。日本に留学した人や実習生できた人には、さらに労働力であって欲しいとの実情があるのです。

 この在留資格に基づく対象国は当面9か国に限られます。ベトナム、フィリピン、カンボジア、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、中国、モンゴルです。中国はやや例外ですが、比較的親日の国に限定されています。

 今後、人口減少の影響が今拡大する日本にとって、外国人労働者を受け入れることは避けられないでしょう。その中でベトナム人の技能実習生や留学生集めも厳しくなっています。都市部では経済成長が始まり、国内にいても稼ぐことができるようになっています。そこで日本に送り込む対象になるのは、田舎に住んでいる青少年たちです。田舎では稼ぐことができない人たちが、日本に行けば高給を稼ぐことができると踊らされて、高い保証金やブローカーへの手数料を払って日本にやってきています。中間に入る人たちが儲けるために人身売買をしているような構図と言えないこともありません。

4、歴史的に外国人労働者は奴隷によって賄っていた

 旧来は労働力の不足を補う方法は、敗戦国の人間を奴隷にすることから始まりました。古代ギリシャでは奴隷を持つのは戦勝国の権利でした。戦勝国はその敗れた相手国の捕虜を奴隷貿易で取引していました。奴隷は交易港に運ばれて、戦利品と一緒に売られていました。ローマ帝国の時代もその繰り返しでした。積極的に対外征服を繰り返したのは、奴隷という労働力が必要だったからとも言われています。

 中世になると交易を仕掛けた民族が利益を上げられるようになり、奴隷貿易も仕掛けるようになりました。モノだけでなく、労働力も商品になったのです。北方系ゲルマン人のヴァイキングは、スラブ人を奴隷としました。750年アッパース朝以降のイスラムでは、トルコ人、スラブ人、ゲルマン人が奴隷になっていたようです。その他イタリア・ジェノバの商人が奴隷狩りを行ったと言われています。ローマ教皇ヨハネ22世は、ジェノバに対して異教徒に奴隷を供給して、力を強めることに手を貸さないように警告したことがありました。

 大航海時代に力をつけつつあったヨーロッパは、新大陸での開拓のためには労働力が必要になりました。その労働力調達の手段が奴隷でした。「奴隷」の代名詞となるアフリカ系の人々がアメリカ大陸などに連れていかれたのは、大西洋奴隷貿易が始まる15世紀以降になります。映画で出てくるような白人が黒人を拉致して、貿易船に留置して移送するような構図ではなく、三角貿易の一環での貿易が行われたようです。

 その仕組みとはこうです。その当時アフリカにも進出していたのはアラブの商人たちです。アラビアンナイト(千夜一夜物語)にある「シンドバット冒険」の話などはその典型です。その当時、黒人の諸王国は部族対立を繰り広げていました。ヨーロッパの人たちは、手を汚さずに奴隷を集めることができました。その仕組みとは、対立する部族にアラブの商人を通じて銃を販売させるのです。その決済方法として、戦勝国が敗戦国から奴隷狩りをします。そこで得た奴隷を銃の代金の決済にあてたのです。その奴隷たちをアメリカ大陸や西インド諸島に連れて行って、プランテーション農業の労働者にしていました。その生産物をヨーロッパに運んで莫大な利益を得ていたのが、植民地をたくさん持っていたスペイン、ポルトガル、オランダ、フランス、イギリスです。西洋列強はこのことによって世界の発展の中心になったと言ってもいいと思います。アフリカで今日も民族紛争が絶えないのは、このような相互不信が消えていないことも原因かもしれません。過去の清算はなかなか難しいものです。人の恨みが消えないような方法は避けなければなりません。

5、発展する地域は世界を移動し続ける 

 ところで奴隷になっていったのは、ヨーロッパに住んでいた民族が対象になっていました。奴隷を意味する英単語SLAVEは、スラブ人に由来すると言われています。スラブ人とは東ヨーロッパにいた人々です。その当時ヨーロッパはまだまだ、未開の地域でした。4世紀から6世紀ごろにはゲルマン人の大移動があったとされている出来事がありました。ゲルマン人とは、Germanからきていますから、今ではドイツ人を指す表現です。ゲルマン人が移動した理由は諸説ありますが、アジア系の騎馬民族フン族がヨーロッパに支配を拡大したことが最大の理由といわれています。モンゴルの騎馬民族だった匈奴がフン族の祖先だと言われています。その当時モンゴルは西洋人に恐れられていたのですね。

 それ以外の理由では、肥料を使わない農耕しかしなかったので耕地を替える必要があったことが言われています。その当時はヨーロッパ人もまだまだ知識が少なく、地位も低かったようです。アングロサクソンという言葉がありますが、イギリス(グレートブリテン島)南部に入ってきたゲルマン系3部族のことをアングロ・サクソンというそうです。その頃はまだまだヨーロッパは遅れた国であり、アジアや中東のほうが進んでいたと思われます。カンボジアにあるアンコールワットは、その当時世界最大の都市だったとも言われています。

 中世ヨーロッパのルネッサンスの三大発明といわれるものがあります。「火薬」「羅針盤」「活版印刷」です。これらのものは、ヨーロッパで発明されたのではなく、主に中国で発明されました。ヨーロッパ人はそれを見て、それを加工してルネッサンス期に合うものに改良して大発展のきっかけを作りました。このことは、近代になり、ヨーロッパが発展を遂げる中で、産業革命以降の技術を日本が学び、日本が高度成長し、その後日本に学んだ、韓国・中国がより安く高性能の機械を作って行く今の時代と逆のことが中世ヨーロッパで起こっていたということになります。

5、外国人と共生するために必要なこと

 今後、外国人と共生する機会が多くなるだろう日本人ですが、外国人と共生したことは少ない経験しかありません。唯一、縄文時代から弥生時代に変わるころは、大陸からの難民が大量に日本列島にわたってきた時代がありました。その時に旧来から日本に住んでいた縄文人と渡来系の弥生人が、対立を経て融合していくことになります。ただ文字の記載のない時代でもあり、どのように融合していったかがわかりません。唯一古事記にも書かれている諏訪大社に関する記載が縄文と弥生の融合の過程を表しています。

 令和という新年号となる時代は、外国人と深く交わる時代になるのでしょうか? 日本が労働力不足になる中で、以前と同じような国力の維持ができるでしょうか?令和の時代はそのような変化の時代になるかもしれません。ただ、日本人が嫌がる労働を安い給料で外国人にやらせることは、いつまでも続けられることではないように思います。外国人に選ばれる国になる努力はせざるを得ません。

 皮肉ですが、今の日本経済を支えているのは、日本に観光に訪れる外国人と日本の部品を使ってくれる外国系のメーカーです。自動車産業以外の産業は、日本が中心ではなくなってきています。製造業が衰退していく中で、日本の文化や自然が世界では認められています。今はまだ日本が選ばれる理由があります。労働者と言えども、日本で働くことが高い収入につながったり、よい生活ができることにつながるから来てくれるのです。もし、外国人にも選ばれない国になるとしたら、明るい未来も描くことができません。

 イチロー選手が引退会見の最後に言っていた言葉は、これからの日本人が感じる必要がある言葉です。「アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと、アメリカでは僕は外国人ですから。このことは、外国人になったことで人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。 」 名選手は感受性もプロフェッショナルです。

以上