2020年12月19日

1、ベトナムの入国制限と緩和

新型コロナの世界的な感染拡大は、弊社のように海外でのビジネスにも大きな影響を与えています。 日本企業のベトナム進出支援を手掛けてきた弊社では、従来の業務が止まってしまいました。日本企業のベトナム視察の支援、会社設立支援、それに伴う不動産紹介などがメイン業務だったのですが、日本からの出張者が入国できない状況では、それに関連した売り上げが立たないのは当然でしょう。

ただ、9月以降の業務に急浮上している案件があります。ルーティンの業務と急浮上した業務の二本柱でなんとか事業の継続ができている状況です。その業務とは「ベトナムへの入国支援」です。現在、ベトナムでは日本からベトナムへの定期便の運航は、ベトナム航空の一部の便以外はされていません。ベトナム政府が外国からの便の着陸を許可していないからです。逆にベトナムから日本への定期便はベトナム航空、JAL、ANAが運航しています。ベトナムから日本への入国を日本政府は認めているからです。平常時に比べて本数は大幅に少なくなっていますが、ハノイとホーチミンからは、1日1便程度は動いています。ところが日本人が使える日本からベトナムへの定期便は運航されていないのです。そのため日本人駐在員は日本への帰国は簡単にできるのですが、ベトナムへの再入国はできないのです。

2月や3月に一時帰国していた日本企業のベトナム子会社の社長さえ再入国できなくなっていました。トヨタ・ベトナム社の社長も入国できないので、ベトナム政府に何とか入国できないかを働きかけていると言う話が5月ごろにありました。ようやく6月からは、入国させたい日本人をベトナムに拠点がある企業が推薦し、日本商工会議所は取り纏めてベトナム政府に提出し、認められた人が特別便で入国することが始まりました。最初は1か月に1便でした。希望者全員が入国できる状況ではありませんでした。

 

2、レジデンストラック(14日間隔離)によるベトナム入国開始

状況が変わり始めたのは8月からです。入国させたい人を推薦することはなくなりました。その代わりにJALとANAが特別便をベトナム航空局に申請する制度が始まっていました。ただ、この制度は面倒な手続きが必要です。ベトナム政府は、感染拡大している国からの外国人の入国を極力制限したいからです。私はこれを弊社のサービスにできるか考えました。ベトナム人スタッフが当局に申請方法などを確認をし、弊社でサポートできる範囲と判断し事業化を周知しました。

入国のための手続きは次のような段階を取らないといけません。

①各地域の県庁に当たる人民委員会に入国許可申請を出します。承認するレターを取得します。

②入局管理局に入国許可及びビザ発給の手続きを行います。

③14日間隔離が前提ですので、隔離ホテルを決めて保健局から隔離指示書を取得します。

④隔離指示書を取得するためには、航空便の仮登録を行います。航空会社のベトナム支店では10名以上の搭乗希望者がいた場合、特別便の運航をベトナム航空局に申請します。

⑤到着する空港から隔離ホテルに移動するための特別車両の手配もします。

⑥搭乗券を確保するためには、出国の10日前までに人民委員会の承認、入国管理局の承認とビザ発給、保健局隔離指示書、医療費負担の誓約書(コロナ陽性の場合、招聘企業が負担をする誓約書)を提出して初めて搭乗券が確保できます。

⑦出国の5日以内にPCR検査をし、陰性証明書を取得できた場合、航空会社に提示をしてようやく搭乗できます。

⑧到着後、直ぐに隔離ホテルに特別車両で移動し、14日間の隔離生活に入ります。隔離ホテルに入るとPCR検査のとき以外は、ドアの外に一歩も出ることはできません。エレベーターさえ止められています。その期間が過ぎれば自由に外に出られるようになります。

NHKの国際報道2000という報道番組では台湾のホテルに隔離されているフィリピン人が隣の友人に物を貸すため8秒間部屋から出たことが事件として報じられていました。そのフィリピン人は監視カメラで見つかり、35万円の罰金を請求されたことがニュースになっていました。どこの国も感染対策には神経をとがらせているようです。

9月から始めている入国支援のサービスですが、弊社では9万円から10万円程度を企業からいただいてその手続きを代行しています。結構幅広い企業から依頼をいただけるので、なんとか会社の運営ができているような状況です。

 

3、日本政府の対応とベトナム政府の対応の違い

 ベトナムにいると新型コロナに対する感染対策に関しては、政府の対応の違いを強く感じます。

ベトナムは幸いにしてコロナ感染はきわめて少ないです。12月18日時点の数字ですが、感染者数1407人、回復者数1263人、死亡者数35人という数字になっています。しかし、1人でも発生すると政府は強い指示を発表します。12月始、日本からベトナム・ホーチミンに入ったベトナム航空のキャビンアテンダント(ベトナム人)が隔離措置を守らず感染させたとして、厳しく処分するとして刑事事件として立件することを発表しています。

ホーチミン市の発生は58日ぶりだったようですが、政府は即座に多数集合する会合などを禁止しました。1月開催予定だったホーチミン日本商工会議所の新年会も中止になりました。ベトナム航空だけは日本からベトナムへの定期便の運航はしていましたが、このことがあってから一時停止になりました。ベトナム人技能実習生などは、多くの人が帰国できず困っている人もいるようです。ここまでやるのかと思うほど厳しく対策を打っています。

一方、日本に帰国する場合は、14日間自宅で自主隔離すれば、ベトナムでも日本でもPCR検査をすることもなくなりました。とりあえず、公共交通機関は使えないとなってはいますが、自主隔離に関しては、それほど管理されているようなことはないようです。買い物に行くことはできたと言うような話は聞くことがあります。

今年の10月に菅首相がベトナムを訪問し、ベトナムのフック首相と会談をしました。その際にベトナムと日本は、ビジネストラックという名称の隔離を取らない短期の滞在を11月1日より再開すると発表されました。これで比較的自由に日本人の往来が再開されるから一安心と思った瞬間がありました。弊社でも14日間の隔離をするレジデンストラックのほか、隔離のないビジネストラックの申請もやることにしました。

希望者があり数人の申請を始めました。隔離はないのですが、宿泊できるのは隔離用に指定されたホテルのなかで、ビネネストラックの受け入れを表明しているホテルのみです。また、移動する車と運転手は政府が指定したものになります。承認を受けるための手続きは、レジデンストラックの手続き以外に、活動計画の提示と招聘企業の感染対策の対応の査察を受け入れる必要があります。また、不動産施設の同意確認と隣接する別会社の同意も必要であることがわかりました。

活動計画には会う人の氏名と携帯電話番号の記載、会議室や滞在場所の面積なども記載をします。招聘企業の感染対策には、入国する人の食事のとる方法や場所の提示、トイレは他の人と同じトイレを使わない対応、通路もほかの人と同じ通路を使わない対応や感染防止設備の設置などが必要になります。そのような厳しい制限を全部クリアすることができる企業は限られていると思われます。実質的には利用できない制度と感じています。日越首脳会談で合意した内容ですが、ベトナム政府は実質的には同意していないに等しいと私は感じています。

 

4、海外から日本へのビジネストラックによる入国(隔離なしの入国)

日本政府は現在、ビジネストラックでの入国をシンガポール、ベトナム、韓国、中国の4か国からの入国を認めています。手続きの手順は次の通りです。ビジネストラックとは隔離なしの短期間のビジネス目的での入国のことです。

 

出国前の手続き

①在外日本国大使館・領事館(在外公館)でビザの申請。活動計画書と誓約書の提出も含む。

②14日間の健康モニタリング

③PCR陰性証明書の取得

日本入国時の手続き

①質問票(健康状態)の提出

②活動計画書と誓約書の提出

③検査証明書提出

④接触確認アプリの導入

 

日本入国後

①14日間の公共交通機関の不使用

②14日間は滞在先と要務先の往復に限定

③14日間の健康フォローアップ

④14日間の位置情報保存

 

帰国時

①相手国における防疫措置

ベトナムの場合は、隔離施設(ホテル)で14日間の強制隔離を実施することになります。

 

レジデンストラック(日本の場合は14日間の自主隔離)の場合はもっと緩くなります。

 

出国前

①在外公館でビザ申請(誓約書の提出)

②14日間の健康モニタリング

 

入国時

①質問票(健康状態)の提出

②誓約書の提出

 

入国後

①14日間の公共交通機関の不使用

②14日間自宅等待機

 

日本の場合、書類を出せばそれ以上の管理は強制的ではなく、完全に管理されて、自由な行動を制限されているベトナムとは大幅に違っています。

 

5、制限や対応に違いがある国ごとの実情

 なぜ、国によってこのような対応の差が生まれるのでしょうか。この論考については、長年ベトナムに滞在している私なりの独断的な考えになりますが、ひとつの考え方の提示です。まずは、国の体制の違いもあるでしょう。ベトナムの経済は市場経済ではありますが、一党独裁の社会主義国家です。政府の指示には強制力があります。

次に考えられるのは医療体制の未整備です。医療施設や感染対策に十分お金をかけられないこともあり、感染拡大を防止せざるを得ない理由があります。

それと私が思うのはベトナム特有の理由です。日本政府と違って、コロナで経済的に影響を受けている人や企業への支援はほとんどありません。国にお金がないことも理由ですが、ベトナム人たちの逞しさも要因ではないかと思います。外国人向けのホテルやレストランなどは経営が厳しいところが多いと思います。しかし、赤字になることがわかると、直ぐに店を締めます。だらだらと営業はしていません。経営者などは不動産などの不労収入もあるので、営業をストップしても生活は可能です。生活が可能でないのは労働者たちですが、その人たちはすぐに実家のある地方に戻ります。年中温暖な地域ですので食うには困りません。田舎で農業をすれば、何とか生きていくことはできます。家畜なども自分でさばいて食用にしています。日本でベトナム人実習生による家畜盗難事件がありますが、家畜解体は多くのベトナム人が日常的にできることも犯罪の温床になっているように思います。

一方、都市で暮らす人たちは行商をして生活をする人もいます。靴磨きをする若者が最近増えているように思います。マスクやたばこを路上で外国人に声をかけて売っている人もたくさんいます。ベトナム人は国が経済的に助けてくれないとわかっているので自分で何とかしようとします。

中には外国人をだましてお金を取るものもいますので、甘い言葉には注意が必要です。いずれにせよ、日本人よりは生きる逞しさがあるように思います。

 

6、正しい危機認識が変わるチャンスをもたらす

日々生活をしているといろいろな変化を知ることがあります。先日、私のスマホが膨らみはじめ、ケースが割れてしまいました。原因はなにかと奥を覗くとバッテリーが膨張していました。発火する心配があると言うことで、急いでベトナムのショップで買い換えました。2年半前に私が買ったSONYのXPERIAは、店頭から消えていました。店頭におかれている数でいうとサムソン(韓国)がやっぱり多く、ファーウェイ(中国)、アップル(米国)、シャオミ(中国)、OPPO(中国)の製品が中央部に展示されていました。その他スペースを取っていたのは、ベトナム国産スマホのV Smart と B Phoneでした。

アップルを除いては、中国、韓国、ベトナムの企業が作ったものばかりです。韓国のサムソンは多くのスマホをベトナムの工場で作っています。アップルのアイフォンの搭載しているカメラは、ベトナムにあるシャープ系の企業サイゴン・エステック社で作っています。スマホの製造拠点は一気に中国とベトナムに移動しています。数本だけ残っていたのでアジアではないものにしました。NOKIA(フィンランドの企業)のスマホを購入しましたが、これもマレーシアの工場で製造されています。スマホを見るだけでもここ数年で世界は大きく変わっていることを感じました。コロナのワクチンもいろいろの国で開発されようとしています。ベトナムでも自国で開発したコロナ・ワクチンの臨床試験が始まっています。いろいろな分野で日本の存在感が希薄になっているのが気になります。現実を正しく見つめれば、日本は何をしなければいけないかを考えることができます。

もう少しで終わろうとしている2020年は大変な年だったのですが、私にとっては勉強になった年でした。当初、売り上げが大幅に減少すると思っていたのですが、役所への申請などの許認可取得の仕事が増えていた弊社では、「ベトナム入国支援」という特需を得ることができました。コロナ禍で感じたことは、今までと同じには生きられなくなったことです。こんな時こそ新しい日常を作るチャンスかもしれません。今までにできなかったことを取り組むチャンスかもしれません。人は危機感がないと新しいことを考えられません。私の場合も4月~7月ごろは危機感の真っ只中にいました。リストラや引っ越しのことを考えていました。何でもやらなければならないと緊張していました。

日本にいる皆さんも大変だと思います。危機感を持っている人は多いでしょう。その危機感こそが新しいことを始める原動力になります。何かを始めるチャンスです。その中で考えられるのが副業です。在宅勤務も増えていることから、空き時間を見つけられたら、他のことができるかもしれません。空いた時間に何か考えられる人は、新しいものを生み出せます。怠惰に過ごしてしまうと時間がもったいないです。

副業を上手にやるためには、自分のスキルアップできること、楽しいと思えること、自分の価値観に合うことにチャレンジすることが大事です。何か違ったことをやってみようと決意すると、自分の価値を再発見できるかもしれません。副業をするときには最低限のルールを守るマナーを持つことは必要です。会社の就業規則で認められることをすること、届出する必要があればやっておいた方がいいでしょう。そのうえで本業の企業の競合先の仕事はしないこと、家族の了解を得ることが必要だと思います。しかし、最低それを守れば新しいチャンスを掴むことができます。コロナ禍であるからこそそんなチャンスがあるかもしれないと思っています。みんながつらい思いをしている中で正しい危機感を持った人が何かを見つけられるでしょう。

企業も同様です。厳しい状況の業種も多いと思いますが、今までとは違った業種に関わるチャンスととらえることもできます。通信機器が中国やアジアに生産拠点が変わる中で、日本は何をしなければならないか?正しく危機感を持てば、新しいものを生み出すチャンスを得られることになると思います。ベトナムのスマホショップを見て、思わず「がんばれニッポン」と思ってしまいました。

以上