ベトナムでは今、こんな表現が飛び交うようになりました、「バブルか?本物か?ベトナム住宅不動産」これはベトナムに駐在する日本人向けのフリーペーパー「スケッチプロ」の表題なのですが、今、ベトナムでは住宅の不動産開発があちこちで進んでいます。地下鉄を含めた都市鉄道建設と合わせて、その周辺でのコンドミニアム(日本で言うマンション)の建設や低層住宅の住宅地の建設が盛んに行われるようになりました。ベトナムでは2010年から12年ごろにはやや不動産バブルの崩壊のような現象があり、不動産価格の下落がありました。その原因は、ベトナムの投資ブームが過熱し、ベトナムの国営企業が不動産投資に走り、ベトナムの銀行もそれに合わせて与信枠を拡大し、不動産投資が過熱しすぎてバブルになったのでした。そのため、それ以降バブルの崩壊らしい現象が起こりました。

 

ただ、労働生産人口が多く、経済成長の真っ只中のベトナムは短期間に回復を図り始めています。ベトナム人の不動産購買意欲も盛んです。平均年齢が30歳程度のベトナムでは、家族のために住宅を所有したいと希望する人が増えています。少し余裕のある人は、投資用に不動産を所有する人も増えています。それに加えて2015年に住宅法改正があり、ベトナムに入国できる外国人が不動産開発の新規物件を購入できるようになりました。ベトナムに入国できるというのは、まさに言葉通りで、パスポートに入国スタンプが押されている人が買えるとの事です。それにより日本人も購入する人が増えています。それば私もいろいろな日本人に聞かれたり、契約の仕方や送金の仕方、サブリースして家賃の回収の仕方を聞かれる機会が多いのでかなりの日本人が関心を持っているのがわかります。

 

海外の不動産投資には、以前から関心を持っている人もいたようです。東南アジアは比較的関心があり、タイ、マレーシア、インドネシアなどで関心がもたれていました。カンボジアも比較的購入し易いとの理由で販売が進んでいたようです。しかし、価格も高騰し、投資利回りも低下していることから、近隣諸国に比べて不動産価格が安いベトナムの物件に関心が高まっているようです。ベトナムは2015年前までは、居住している外国人以外が不動産を購入することはできませんでした。また、人に貸すこともできませんでした。ベトナムの土地は、「土地は人民のもの」という名の国有財産です。土地の使用権だけが売買の対象になります。そのような規制が厳しく、法制度も曖昧な点が多いこともあって、外国人が投資目的で購入することはありませんでした。

 

ところが、2015年の法改正は、外資の不動産開発事業も認められるようになり、多くの日本企業も参入を始めています。私の知る限りでは、東急、大和ハウス、住友不動産、阪急、西鉄、サンヨーホーム、クリードなど日本企業が不動産開発を行うようにもなってきました・

法律がまだ必ずしも明確になっているとは限らないベトナムではありますが、

徐々に細則・通達などが出ており明確になりつつあります。不動産を購入できる外国人は、入国した人であれば買えるという単純なものです。ただし、中古物件の購入はできませんが、自己所有の物件を中古物件として売却することはできます。不動産の賃貸に関しても「小規模かつ不定期の売買」とやや曖昧な表現ではありますが、賃貸が可能であることは明記されています。不動産事業の領域まで大規模に拡大するときは、不動産会社をベトナムで設立しないといけませんが、小規模であれば外国人個人が賃貸できるという事です。

また、建物の所有権をあらわす証明書をピンクブックと言いますが、外国人にも発行されます。これは土地使用権、住宅その他土地上にある資産内容を記載した公的な証明書です。さらに賃貸の際は、区レベルの住宅管理機関〈役所〉に文書で通知をすることが通達で明記がされました。また、賃料の海外送金については個人所得税の納税後、ベトナムの銀行口座からの海外送金が可能になっています。このように徐々にではありますが、細部が明確になりつつあります。そのような変化は、ベトナムを普通の国として成長させる原動力になりつつあるのを感じています。

 

ベトナム不動産の事を中心にお伝えして来ましたが、一方日本でも不動産投資は盛んに行われていると聞きます。これは大都市部に限ったことのようですが、それでも不動産投資は活発なようです。2005年から人口減少社会になった日本でなぜ不動産価格が増加するところがあるのでしょうか?その理由は、金融緩和、低金利政策に原因がありそうです。日本のデフレ脱却、経済成長を図るために、お金が民間に回るように金融緩和や低金利政策が行われました。特に厳しい局面に立たされているのは金融機関です。安定的に運用できる国債ではなく、積極的な融資を行う必要が出て来ました。私が思う積極的融資が検討できるのは次の二つです。一つは不動産投資です。担保がはっきりしている不動産投資は、銀行が融資し易い案件です。もう一つは、海外進出に伴う

親会社への融資の拡大です。地域の中でも体力のある企業が、海外進出を検討します。海外は金利が高いこともあり、日本の銀行で資金を調達して、海外の子会社に親子ローンで貸すのが一般的です。その仕組みは銀行にとってもリスクが少なく、融資を拡大し易い案件になります。

ベトナムにいると銀行のそのような考えを垣間見ることができます。それはどういうことかというと、日本の地銀、信用金庫の行員たちがメガバンクやJETRO、ベトナムの銀行に出向している方がたくさんいます。その方たちの重要な仕事は、地域の取引先企業が海外進出を検討するときに情報提供したり、水先案内をする事です。そのために多くの行員さんたちが駐在するようになりました。企業の海外進出は、銀行にとっても収益を上げる大事な仕事なのです。

 

ところで私はふと思うのは、金融緩和は本当に将来の日本にとって良い方向に進んでいるかと言う問題です。ベトナムの不動産は、外国人だけが買っているのではなく、ベトナム人も自己所有のためと投資用に買っています。比較的不動産価格も安定した推移をしています。しかし日本の不動産購入は金融政策の賜物です、どちらかと言うと日本の不動産投資にリスクが大きいと思えるのは私だけでしょうか?日本の製造業の海外進出は、生産基地が日本から離れる事を意味します。ただ、企業としても人口減少の日本だけを市場と見ていては危ないとの事情もあるでしょう。このように金融緩和のもたらす影響は、日本の繁栄とは必ずしも結びつかないこともあるのです。つい最近の話ですが、私が20年以上勤務して、退職した保険会社の新事業戦略の責任者の方とベトナムでお会いし、若干の協力をしました。そこで聞いたのは、監督官庁のトップが日本の金融機関に対して海外戦略を持つようにと指導をしているとの事でした。そこで私の古巣の会社もアジアへの展開を意識し、日本の市場の縮小が必ず起こる事を前提に、10年後の収益化を進める戦略を立てていると聞きました。今から進めないともう間に合わないとの認識でした。私はその会社が経営危機に瀕したときに退職したのですが、そのような会社でも海外進出を重要な柱として検討していることは驚きでした。

 

一方海外経験の長い方は別の視点で危機感を持っています。最近お会いした日本の大企業の製造業のベトナム法人の社長の話しを紹介します。その方は、入社以来、アメリカ、中国、東南アジアなど海外勤務経験が豊富な方です。その社長は、「日本は労働生産性が落ちている」と言うのです。理由はこうです。「日本では製造部門が縮小していますが、管理部門は大きくなっています。管理部門は、データの収集、見栄えのいいドキュメントの作成など上司に評価を得易い課題に時間とエネルギーが取られています。稼ぐことにエネルギーを使っているのは海外です。」そのような主旨の事を言っていました。大手企業の中でも様々な不正が発生していますが、小さな組織の自己保身が優先される事態は組織の劣化の現われのような気がします。

 

日本企業以外の外資企業は、海外の現地法人の責任者が決断をします。そのため早く決断がされます。また、もし失敗したときは責任を取ります。ところが日本は、丁寧な資料を作成し、皆で合議して決めます。海外の事情がわからない人の意見が中心に決められることもあります。そのため実際上は実行できないことも決めてしまうこともあります。しかし、日本は皆で決めたことなので、誰も責任を取らなくてすみます。組織を動かすときには、トップダウンで行わなければならないことがあります。トップが責任を取るからこれをやりなさいと指示する事です。それをしない日本の組織内では、機能不全が起こり始めるのは当然のことだと思います。

 

日本が今どんな状況に進んでいるかを知っておく必要があります。高度成長の時には、今のような非正規雇用が増加して、貧困な世帯がこれほど増加するなど想像もできませんでした。少子化・高齢化といわれても、今の生活で究極の状況に入っているわけではありませんが、可能な想像はしておく必要があります。人口が減り、税収が減ることは何を意味するでしょうか?端的に言うと今のような公共サービスができなくなると思います。公共サービスとは、水道、交通、通信、電気、義務教育などです。人口が減り、税収がないとそれらのサービスを削減せざるを得ません。ある程度費用対効果が期待できる公共事業だけしかできなくなります。人口が少ない限界集落にまで、今までの公共サービスを継続することが不可能になると思います。電気も水道の施設も維持費がかかります。維持費だけがかかるならば、その集落は移転を迫られることはありうるでしょう。今までは自然災害で、移転をせざるを得なかった世帯はたくさんありましたが、今後は財源の問題で移転を迫られる世帯が増えてくる可能性があります。

 

今回もまた解決策のない闇の中に入ってしまいました。でも、開き直って考えてみましょう。先日お会いした富士通ベトナムの方にベトナムの事業の一端をお聞きしました。それがもしかしたら手がかりやヒントがあるかもしれないとおもいました。ベトナムでは農業従事者が70%程度いますが皆貧しいとの事です。どうしたらいいのかをJICA(国際協力機構)を通じて、ベトナムの農業のIT化を支援しているとの事です。具体的には次のような対応を図っているようです。

  • 土壌の状態を簡易キッドで測定し、結果を撮影・送信
  • 自動センサーで日射量、気温、土中水分量、養分量を測定
  • 作業指示を確認、水分・養分を補給

それらの情報を集計管理して、栽培状態の管理と支援を行い、一定の頻出と収穫量の確保、現地の農業の啓蒙支援を行うとの発想です。

 

このような考えがうまくいくのかはわかりません。ただ、将来想定できる課題に関して、時間のあるうちに準備したり、新しい考え方を導入することは重要なことであると思います。少子高齢化が必ずしもマイナスばかりではありません。逆説的ですが人口の増加は危険が伴います。分け前が少なくなります。特に食料の問題は重要です。自然環境の変化の中で、人口が少ないために食料の自給率は確保できます。子育てなど教育費の減少、居住面積の拡大、耕地面積の拡大なども伴います。また、人が少ない分、事業の効率化は、IT技術、AI(人工知能)で対応が可能になることもあるでしょう。

 

人口減少がもたらした成功例といえるかはわかりませんが、過去のケースを紹介しておきましょう。1840年代のアイルランドです。アイルランドは飢饉のため、アメリカへの移民が増加しました。その後100年にわたり、移民が流出しました。ケネディ大統領の祖先もそうですね。その結果、賃金上昇、地価下落が起こりました。産業面では農業から、牧畜にシフトしました。今までの農業は労働集約だったのに対して、人口が減り土地が余ったので労働力が少なくてすむ牧畜に転換しました。労働者が少ないので、労働力は貴重になり賃金は上昇しました。その例から、日本でも人口減少に伴って、潜在的な労働力である出産や介護のために就業できない人も、子育て、介護支援を行うことで労働力になります。また、そのような支援をIT化、ロボット化することが、新しい産業の創生になるかもしれません。日本にとって重要なのは現実を直視し、今までと同じでいることはできない事を悟り、変わっていくことに勇気を持つことのように思います。日本にとって必要なのは、会議や資料つくりだけではなく、人口が減っても労働生産性を上げるためになにが必要かを今のうちに真剣に検討し、準備をしていくことだと思います。

 

以上