先日アメリカ大統領選挙が行われましたが、世間の予想に反した結果になりました。個性的な発言を繰り返すトランプ氏が当選しました。個性的なというと聞こえがいいですが、排他的な主張を繰り替えすといったほうがいいかもしれません。このことは私としては、そこまでのことは予想してはいなかったのですが、ありえるシナリオとは思っていました。その理由は、一つはイギリスのEU離脱を選択した国民投票です。もう一つは、韓国で渦巻く朴大統領への批判です。

資本主義の先進国が抱える問題は、アメリカも例外ではないと思っていました。

 

アメリカ、英国、韓国のそれぞれの特徴は、グローバル資本主義の方向性を突き詰めている国であると思えます。アメリカ、英国は、金融資本主義の様相を呈しており、マネーが支配をしている構図です。韓国は財閥中心の企業再編が行われ、大企業以外は国内に残れないか、残っても利益を上げられなくなっています。このような国の住民によるこのような選択は、今までの秩序を壊して欲しいと心から思っている人が増えているのが理由ではないかと思います。

 

それに対して、日本がまだ落ち着いていられるのは、比較的社会保障が行き届いていて、所得の再分配機能があるからだと思います。ただ、日本では再分配を強化すると労働意欲が低下し、経済成長が損なわれるとの論調が増えているので、これからどうなるかは甚だ心配なところです。なぜ先進国は、二極化が進むのか、そしてその先はどうなるのかは最近の私の関心事ですが、その問題は後半でお話をさせていただこうと思います。

 

グローバル経済の話から入ってしまいましたが、それに比べると経済発展の緒についたばかりの新興国は、人々の精神状態は安定しています。なぜ安定しているのかを私なりに考えると、第一には未来に希望を持っていることにあると思います。私が思う人の幸せの根幹は、希望があるかどうかです。その点では、将来高給を稼ぐために語学や技術を身につけるため一生懸命勉強すること、幸せな結婚をし、子供たちには教育を受けさせて、子孫までも幸福になっていくという夢を見られることは、なんとも幸せなことだと思います。実は私は最終的にはそのようにはならないと思います。新興国でも格差社会になっていくものと思いますが、ここではそれには触れません。

 

最初から堅い話から入ってしまいましたが、ちょっと柔らかく今のベトナムの社会での特徴的な話をしていきましょう。弊社のベトナム人スタッフに聞いたところ最近話題は、ベトナム南部のチャビン省の農家の男性が、ベトナム史上最高額の宝くじに当たったと言うものでした。弊社のスタッフに言わせると「アメリカで開発された新しい宝くじ」といっていましたが、よくよく聞いてみるとロト6であることが判りました。1から45までの数字を任意に6つ入力し、無作為に抽出された数字と完全に一致すれば当選となるようです。

 

賞金の額は、920億3千万ドンです。ベトナムの通貨であるドンでいっても検討がつかないですね。日本から来られた旅行者や出張者からいつも言われるのは、ドンで言われても一帯その価値がいくらくらいなのか検討がつかないといわれます。確かに10万ドンといわれてもそれがいくらかはわかりませんね。そこで私が言うのは、0を二つとって2で割るとほぼ円の金額になりますと説明します。その計算式でさっきの920億3千万ドンを計算すると4億6円万円程度になります。実際は所得税がかかるようなので、受け取る金額は3億9千万円ほどのようですが、ベトナムでは大変な数字です。ベトナムの平均年収が21万円程度ですから、1900年分の年収に当たります。

 

弊社のスタッフによるとその農家は、お金が盗まれないように、寝ずに監視しているとか、外にでるときには、顔を隠して外出するなど生活が一変したとの事を言っていました。ところで弊社スタッフが言ったロト6を取り扱うのは、国営企業とマレーシア企業が導入した宝くじと書いてありました。ベトナム人にとって先進的なものは、アメリカで開発されているという意識が強いようです。ベトナム人富裕層にとって、子供を留学させたい国はアメリカが筆頭です。日本もかなり上位に入るはずですが、ベトナム人があこがれる先進国が、ボロボロになり始めていることは皮肉なものです。

 

もう一つ話題を提供しましょう。日本人向けフリーペーパーの「SKETCH」の、今月号の特集記事を紹介しましょう。「ベトナム女子から学ぶおしゃれ術・・現地で!オトナ女子洗練スタイル」です。

記事の中にある言葉を拾っていきましょう。日本人向けにかかれていますが、

「天候や治安の違い、洋服やチョイスの少なさから、日本人はおしゃれに関して地味になっていく人が多い模様。しかし、完全な日本スタイルだと、ベトナム人からはダサイ!と思われてしまうかも。と書かれています。

ベトナム女子の着こなしポイント

  •  クロップトップ&ワイドパンツが日本でのお馴染みコーデだが、ボディラインは隠すよりあえて見せる着こなしがベトナム流。
  • 膝丈ドレスにパンツやレギンをあわせるのは、ベトナム的には絶対NG。腰に巻いたリボンで女性らしいボディラインをアピールしよう。
  • オフィスではストライプかドット柄の袖裏のあるブレザーを合わせるのがオススメ。羽織るだけでビジネス仕様に。
  • 背中側が大胆に開きバックススタイルにリボンをあしらったトップスがブーム。インナーが見えても平気なベトナム女性は、おしゃれな見せブラ「ブラレット」でセクシーさを
  • シャツをカッコよく着るコツは、袖をロールアップすること。最後に袖口を折り返すのがベトナム流。
  • バイクに良く乗るベトナム人の女の子が愛するのが、ワンピースとスニーカーの組み合わせ。アクティブ×ガーリーはいまどきのおしゃれの新ルール。

という具合でベトナム人女子はなんともアメリカ的です。セクシーさと自分の個性をアピールするのが特徴です。平均的な服装を好む日本人とはかなり対極です。それと若い国だからこのようにアクティブなんでしょうか?うらやましい限りです。

 

さて、もう一度経済問題に戻りましょう。先進国は二極化が進んでいると冒頭でお話をしました。では先進国はなぜ二極化に進むのでしょうか。私はグローバル化の行く先が、マネーゲームになっているからだと思います。資本主義のはじめのころは、外国で安いものを調達して、先進国で高く売る構図でした。その後、工場を安い人件費のところに移して、安くできたものを高く売ることで経済が発展してきました。極論すれば、後進国から先進国が収奪する仕組みがそろそろ機能しなくなってきたのではと思います。グローバル経済に参加する人が増えすぎて、安く仕入れたり、安く作ることが徐々に難しくなってきました。もう一部が収奪を独占できなくなってきたというのが現代資本主義の現実だと思います。そこで出てくるのがマネー資本主義です。簡単に言うとマネーを梃子にして、他のマネーを収奪するシステムとでもいえるでしょうか。

 

現在の社会を簡単なゲームの例であらわしてみましょう。日本人全員がコイン投げのゲームをしたとします。ゲームを相当数繰り返すとどうなるでしょうか。その結果は、持ち金が少なかった人から、多かった人にお金が移動しているという現象が起こります。個々の勝負は公平でも、ゲーム全体では持ち金の多さが勝負を決めます。

 

コインの表が出るか、裏が出るかを当てるだけの公平なゲームです。不正はないこととしますから、当たる確率は50%です。しかし、何回も繰り返すこのゲームにとって最も重要なことは何でしょうか?それは、ゲームの参加者であり続ける事です。参加できないということは、賭けるお金を失ってしまったからです。失わない最大の秘訣は、当たり続けることでしょうか?どんな人でも当たり続けることは不可能でしょう。ロト6のように45通りの6つの数字が全部当たるなんて事はまずありません。当たり続けることでないとするとその他は何でしょうか?それは、元手がたくさんあることです。元手をたくさん持って、比較的堅実にゲームをする人が最後は勝つのです。その結果、お金を持っている人が、少ない人の分も受け取ることになります。それはなぜでしょうか?少ない人は、どこかでゲームオーバーになってしまうからです。それこそが資本主義の競争の原理です。その現象がくり返し行われているのが、現在の資本主義経済です。

 

持っている人は極端な失敗をしない限り、ゲーム(競争)の中には残っており、参加者が減ってくるにしたがって取り分は大きくなります。まさに、現在資本主義はこのゲームと同じようになっていると思います。ゲームオーバーした人は、もう二度とお金を増やすゲームには参加できず、ぎりぎりの生活を繰り返すことになります。そのような人は将来に希望を持てません。社会が変わってほしいと思うのは当然と言えます。二極化とはこのマネーゲームの結果、お金を持つ少数の人と持たない多数の人に分かれていった過程のことだと思います。高度成長期には、一度失敗をしても再挑戦の機会や稼ぐ機会が得られました。しかし今は、運や初期条件(親が金持ち、生まれながらに高い才能がある)だけがものをいう時代になってしまいました。まじめにこつこつ働いても報われないと思われるような社会は、将来に危険な要因を生み出す社会のように思います。

 

私は、アメリカ大統領選挙のようにとにかく今の社会を良くも悪くも変えて欲しいとは思っていません。しかし、日本には変えなくてはいけないところがたくさんあると思います。大事なことは、ゲームオーバーした人でも、もう一度ゲームに参加できる社会にすることです。元手のかからないゲーム(投資)のチャンスを与えることができる政治や再分配の仕組みを作ることだと思います。あるいは、マネーゲームとは別の生き方を選ぶこともあると思います。

 

私もベトナムに渡るときは、このゲームから滑り落ちた存在でした。今でもゲームから降りた時に比べて、収入が大きく変わったわけではありません。苦しいのは相変わらずですが、少ない生活費でも暮らせるようになりました。また、以前ほど将来の不安を懐かなくなりました。まずは健康でいられれば何とかなると思っています。それと並行して大事な要素は、私にはやらなければならないことがある事です。それは、ベトナムの事業を私に任されているからです。

 

私はベトナム人を使って、事業を9年間にわたり行ってきました。その中で最近確信をもてるようになってきたことがあります。会社の経営においての根幹は、「信用をつくる」ことと「人を育てる」ことだと思うようになりました。

一つの仕事の信用が、他の仕事の信用を生みます。他の仕事を拡大していくと、自分ひとりではできなくなります。そうなるとある程度は、ベトナム人スタッフに任せなければいけなくなります。仕事を任されたベトナム人スタッフは、私がベトナム事業を任された気持ちと同様に責任感を持つようになります。責任感を持って行った仕事はお客様から評価を得るようになります。その評価がまた他の仕事での責任感にも繋がります。そうして築き上げた人間性や資質は、その人の財産になっていきます。当初にくらべ、私の心の中にもベトナム人への信頼が強くなって来ました。

 

私は韓国のように大企業しか残らなくなるような社会にはしてはいけないと思います。小さい単位の共同体や企業が、生き残っていける社会が多くの人の尊厳と自信と将来の希望と子孫への健全な伝承を生んでいくと思っています。そのような社会にするための国や地方自治体の役割、地場の企業の役割は大きいと思います。

 

以上